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不安症の社会保障

  • 斎藤知之
  • 2月8日
  • 読了時間: 4分
不安症の社会保障

不安症(パニック症、社交不安症、恐怖症など)の社会保障について解説します。


 

目次

 

社会保障とは


社会保障とは、いざという時に生活を支える保障です。たとえば、病気で医療機関に受診する時は、健康保険により費用は7割引き(3割負担)になります。この健康保険は、日本人にとって身近な社会保障制度の一つです。他には、雇用保険(失業保険)や老齢年金なども社会保障制度です。


日本には、病気、疾患、障害に関連する社会保障制度が沢山あります。不安症は、正常な心理状態に近いものですが、精神疾患の一種に分類されており、病気や障害として扱われます。特に、パニック症で公共交通機関に乗れなくなったり、社交不安症(社会不安障害、対人恐怖症)で人と関わるのが難しくなったりすると、生活への支障が大きいものです。不安症になり、生活に不便を感じたら、利用できる社会保障制度があります。以下に列挙していきます。


休職時の傷病手当金


働いていて、職場の健康保険に入っている方は、不安症により働けなかった期間に対して、傷病手当金を申請することができます(国民健康保険には傷病手当という制度がありません)。


不安症により職場に行けなくなってしまう人もいます。たとえば仕事に行こうとすると気分が悪くなり、動悸、吐き気、頭痛がするなどで、仕事に行けないなどが典型的です。この時は、たとえば入院したために仕事に行けなくなった場合と同じように、病気により働けない状態と解釈されます。その際は、まず医療機関で、不安症により就労困難という内容が書かれた診断書を発行してもらい、それを職場に提出します。


後に、通院または入院した医療機関に、不安症により働けなかった期間と、その間に通院または入院していた事実を傷病手当金申請書に記載してもらいます。これを職場に提出すると、健康保険組合は傷病手当金を支払います。


この際の注意点は2つあります。一つはちゃんと通院または入院していること。もう一つは、傷病手当金は、過去に働けなかった期間について申請するもので、今後休む予定の期間に対して申請できないということです。時々、もう休むことは決まっているから早めに傷病手当を申請したいと言う人がいますが、それはできない決まりです。


自立支援医療


不安症の治療期間は数年に及ぶこともあり、完全に治るのには時間がかかります。そうなると治療費を心配する人もいると思います。この際に利用したい制度が、自立支援医療です。


これは行政の制度で、自立支援の指定医療機関に通院していると、割引制度が使えます。医療機関や保険薬局の費用は、健康保険を利用すると3割負担(7割引)になりますが、さらに自立支援を利用すると1割負担(9割引)になるので、お財布にやさしくなります。


不安症の場合、継続して通院する必要がある場合に限り、役所に自立支援を申請することができます。年に数回だけ通院するとか、たまに受診するような場合には申請できません。


精神障害者保健福祉手帳


不安症で仕事や生活に対する支障が大きいことがあります。たとえば、不安症により仕事に行けない、電車に乗れない、他人と関われないなどの症状は、とても困るものです。この場合、精神科・心療内科に通院し、その初診日から6ヶ月経過したら、精神障害者保健福祉手帳(障害者手帳)を申請することができます。これにより、電話料金や水道料金などの公共料金が割引になったり、障害者雇用枠の仕事に応募できたりしますので、生活の支えになるはずです。この障害者手帳の申請には、6ヶ月間の通院が求められますから、このためにも医療機関を受診して、しっかり通院することが大切です。


不安症の就労支援と障害者雇用


障害者福祉の中で就労支援施設や障害者雇用が注目を集めています。就労支援施設は、職業訓練や就職活動を支援する就労移行支援施設、簡単な仕事を行う就労継続支援施設などがあります。また、障害者雇用には、精神疾患も加わっています。実際、対人的な不安、緊張が強いと、就職が難しくなるものですが、就労支援や障害者雇用は、そういう方のための制度です。障害者雇用枠に応募するには、上記で説明した精神障害者保健福祉手帳が必要です。


このように、不安症で利用できる社会保障制度は色々とあります。利用する条件を満たしている場合は、遠慮なく利用してください。

 
 
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