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斎藤知之

薬を使う劣等感~不安障害(不安症)~


不安障害(不安症)の薬物療法

診療していますと、時々、薬を使うことに劣等感を感じる方にお会いします。


薬を使っているなんてダメなやつ」と自分にレッテルを貼ってしまうのです。不安障害(不安症)になっても、自分でそう考えたくないからと言って、薬を使わない人もいます。


また、心無い人から「薬を使う人は弱い人間」だと批判された経験を持つ方もいます。人からこのように批判されるのは辛いことだと思います。


しかし、医者はデータを見ていますので、医者からするとこの感覚は正しくないように思います。


精神科や心療内科の医師から処方される薬は、臨床試験により効果が確認されています。この臨床試験では、薬を使う人と使わない人を比べます。そして、薬を使う人の方が使わない人よりも精神的に良いというデータが得られると、薬が行政から公認されます。


つまり、データを見る限り、薬を使っている人の方が、使わない人よりも精神的に優れていることになるのです。


こう考えると、本当に薬を使う人はダメな人なのか、本当に薬を使う人は弱い人間なのか、疑問がわいてきます。少なくとも、医学や統計学の見地からは、全く逆の結果が出ています。


よくよく考えれば、薬を使う劣等感は、合理的な判断に基づくものではないと分かります。これは偏見です。


特に、他人に対して「薬を使う人は弱い人間」などと批判する人は、優しさも倫理観も知性もありません。そんな言葉は無視して、早く治療した方が賢いはずです。


私個人としては、不安障害(不安症)になったら、早く治療して元気になる方が良いように思います。薬を使わずに治るなら、全く問題ありません。


しかし、不安障害(不安症)が続いているのに、「薬を使っているなんてダメなやつ」「薬を使う人は弱い人間」という偏見によって薬を使わないと、良いことがありません。ただ不安症状により長く苦しむことになります。薬を使っていたらもっと早く良くなっていたかもしれません。それはもったいないように思います。


もしも、薬を使う劣等感を抱えている方がいらっしゃいましたら、一度考え直し見てることをおすすめします。

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